COLUMN コラム
ZEH住宅普及へのハードルとは?
こんにちは、レモンホームです。
今回は、レモンホームの専任ファイナンシャルプランナーによる解説の第2回。
「ZEH住宅普及へのハードルとは?」についてお届けします。
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前回コラムではZEH住宅とは何か、そしてZEH住宅をめぐる時代の変化について取り上げました。
https://lemonhome.co.jp/column/column-5694
2025年には住宅の性能基準が義務化され、2030年には現在のZEH基準が最低基準になるとされているにもかかわらず、ZEH住宅はもちろん、省エネ基準の住宅ですら本格的な普及には至っていないというのが実情です。
経済産業省が2020年3月に公表したZEHの普及促進に関する資料には、2018年に建築された新築住宅が約287,000戸であること、その中で、ZEH住宅の建築は約55,000戸と20%に満たない水準であることが報告されています。
(ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和5年度の関連予算案より)
なぜ高性能で経済効果も高いZEH住宅の普及が進まないのか。
理由は様々あるとは思いますが、集約すると「初期費用の高さ」にあると言えると思います。
【普及への障害:①】 住宅価格の差
まず、単純にZEH住宅は住宅価格が一般的な住宅よりも高くなります。理由は明白です。求められる性能基準を満たすために高品質な建材を使用する必要があるためです。
住宅の断熱性能に直結する断熱材や窓材の厳選、加えて工法の採用、これらの費用だけでも初期費用が大きく上昇することになります。
2023年4月現在、同じ大きさの住宅を建築するとした場合、一般住宅とZEH住宅とでは概ね300万〜500万程度の差額が生まれるとされています。
住宅を新築すること自体、数千万かかる話ではありますが、そこからさらに数百万円の費用上昇。この差額は大きなハードルとなっています。
【普及への障害:②】 申請費用の差
また住宅価格以外の費用も整理しておく必要があります。
ZEH住宅は適切な基準で建築されていることを証明するため、性能認定を取得する必要があります。当然ながら一般住宅にそうした申請の費用はありません。この申請にかかる費用は、施主自身が負担することとなっています。
ZEH基準であるかどうかの性能認定はBELSと呼ばれています。
建築しているハウスメーカーが独自に行う検証ではなく、第三者が検証を行うため、より信頼できる評価として認知されています。
このBELS申請にかかる費用は各ハウスメーカーによって様々ですので、詳細については建築を希望するハウスメーカーに確認するようにしましょう。
【普及への障害:③】 設備導入の差
加えてZEH住宅は、エネルギーを創出するための設備導入が必須となっています。概ね太陽光発電の設備を導入することが多いと思いますが、その導入費用は一般的に安価には収まっていません。
経済産業省が算出したデータによると、5kWの太陽光発電システムの設置費用の相場が137.5万となっており、1kWあたりに換算すると27.5万円/kWとなります。
太陽光発電のパネルだけではなく、パワーコンディショナーと呼ばれる装備も設置が必須。また架台そのもの及び設置にかかる工事費用など諸々含めると、導入費用として150万~250万程度は想定する必要があるでしょう。
【普及への障害:まとめ】
上記の通り、住宅価格や申請費用、設備導入費用などを原因として、総じて初期費用が上昇してしまうことがZEH住宅の普及を妨げている、と言えるかと思います。
ただ、国もこうした事情を考慮しており、ZEH住宅の普及のために補助金を出しています。(下記の表参照)
初期費用は高いものの、こうした補助金制度を活用すると多少、負担も軽減されます。
カーボンニュートラルに向けた取り組み、住宅性能をめぐる性能基準の義務化などを考慮すると、今後もこうした補助金は何らかの形で継続される可能性が高いと言えるでしょう。
ただ、補助金を考慮しても、初期費用の上昇を理由にZEH住宅を見送る選択をする方々が多いのが今の日本の現状です。確かに初期費用の上昇は月々の返済額の上昇に直結はするのですが、果たして、初期費用の上昇は人生における「住宅コスト」の上昇になるのでしょうか。次回は住宅のコストについて取り上げていきたいと思います。